The Byrds/(Untitled):バーズ/(タイトルのないアルバム)

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The Byrds - Untitled and Unissued

70年9月発表。バーズの最初で最後の2枚組アルバムとなった本作は、後期の傑作として評価の高い一枚です。前作発表後ベースのジョン・ヨークが脱退し、後任にはスキップ・バッティンが加入。演奏力としての観点から見るとバーズの歴史上もっとも充実していた時期であり、ロジャー・マッギン始めメンバー自身も自覚していたのでしょうか、本作は1枚目がライヴ録音、2枚目が新曲のスタジオ録音となっており、彼らのバンドとしての魅力をじっくり堪能できる作品となっています。プロデュースは前作から復帰したテリー・メルチャーとジム・ディクスンが担当しています。そして曲によっては、グラム・パーソンズがコーラスで参加していることが注目でしょうか。

まずライヴ録音のオープニングを飾る「Lover Of The Bayou/ラヴァー・オブ・ザ・バイユー」は、マッギンとミュージカルの演出家として名を馳せるジャック・レヴィとの共作。このナンバーは、前年にマッギンが未公開に終わったブロードウェイ・ミュージカル『ジーン・トライプ』の為に、レヴィと共に書き下ろした内の1曲で、本作にはこの曲の他に「Chestnut Mare/栗毛の雌馬」、「All The Things/オール・ザ・シングス」、「Just A Season/ジャスト・ア・シーズン」と計4曲が収録されています。重量感のあるリズム隊と、クラレンス・ホワイトのギターも聴き物のバーズ流スワンプ・ロックとも言える傑作ナンバーで、後に至るバーズやマッギンのソロのステージでも好んで取りあげられています。

「Positivery 4th Street/寂しき4番街」はボブ・ディランのナンバーで、ディランがエレクトリック・ロックをやり始めた時に攻撃的な批判を繰り返したフォーク・ファンやメディアを痛烈に皮肉った曲です。カントリー・フレーヴァー溢れるクラレンスのストリング・ベンダー・ギターがやはり素晴らしい。続く「Nashville West/ナッシュビル・ウェスト」も、そのストリング・ベンダーが大活躍する、カントリー・ロックのインスト・ナンバー。スタジオ・ヴァージョンは『Dr.Byrds & Mr.Hyde/バーズ博士とハイド氏』(69年)に収録されています。

ここからはいわゆるフォーク・ロック時代のバーズの名曲が4曲ずらっと並びます。「So You Want To Be A Rock'n' Roll Star/ロックン・ロール・スター」は、4枚目のアルバム『Younger Than Yesterday/昨日より若く』(67年)に収録されていたマッギンとクリス・ヒルマンの共作によるナンバー。ディランの「Mr.Tambourine Man/ミスター・タンブリン・マン」は、言わずもがなの大ヒットデビュー・シングル。マッギン作の「Mr.Spaceman/ミスター・スペースマン」は、『Fifth Dimension/霧の5次元』(66年)に収録されていた、その後のカントリー路線の先駆けだったとも言えるナンバー。各曲ともかつての原曲のイメージを大事にしながらも、クラレンスのギターが絡むことによって、新たな息吹を加えることに成功していて、このあたりも聴き所の一つしょう。

アナログのB面をフルに使って収録されていた「Eight Miles High/霧の8マイル」は、16分もの長尺ナンバーに仕立て上げられた、当時のライヴならではのヴァージョン。何と最初のヴォーカルが聴こえてくるまで12分間もあり、メンバーのソロなども含めたインプロヴィゼーション・プレイを中心に展開されていきます。若干古臭さがあるのは否めませんが、この時期のバーズがいかに演奏力に自信を持っていたか、よく分かる一曲でしょう。

スタジオ盤の幕開けを飾る「Chestnut Mare/栗毛の雌馬」は、間違いなく後期の名曲の一つです。前述のようにミュージカル『ジーン・トライプ』用のナンバーで、野生の雌馬を手なずけるのに奮闘するという内容の歌詞(おそらくレヴィによるものでしょう)に見事にマッチしたメロディ、演奏がまず素晴らしい。マッギンによる語り部調のヴォーカル、トラッドっぽいメロディが顔を出すブリッジ部分共々、曲構成においても文句なしの一曲でしょう。この曲も現在に至るまで、マッギンの重要なレパートリーの一つで、私個人もバーズの中でもっとも好きな一曲です。

「Truck Stop Girl/トラック・ストップ・ガール」は、リトル・フィートのナンバーのカヴァー。リトル・フィートはまだこの時期デビュー前でしたが、クラレンスがロウエル・ジョージにもらったデモ・テープに入っていたナンバーだそうです。クラレンスはロウエル・ジョージと親しい間柄だったとのこと。クラレンスの独壇場とも言えるナンバーで彼のヴォーカル、ギター共に聴き物です。なおリトル・フィートのヴァージョンは、同年発表のファースト・アルバムで聴けます。

「All The Things/オール・ザ・シングス」も、再び『ジーン・トライプ』からのナンバー。グラム・パーソンズがハーモニーを付けており、優しさ溢れる穏やかなナンバーです。「Yesterday's Train/昨日の汽車」は、ジーン・パーソンズとスキップ・バッティンの共作ナンバーで、ヴォーカルはジーン。ゆったりとした曲調に、ジーン自身が吹くハーモニカとゲスト参加のスニーキー・ピートによるペダル・スティールの音色が心地よく、味わい深い一曲。「Hungry Planet/飢えた惑星」は、スキップ・バッティンとキム・ファウリーの作品で、マッギンが新たにリメイクしたもの。骨太なギター・リフと、エフェクトをかけたマッギンのヴォーカルの絡みが個性的なナンバー。

「Just A Season/ジャスト・ア・シーズン」は、『ジーン・トライプ』からの本作4曲目のナンバー。マッギンの12弦ギターが効果的で、初期の頃のフォーク・ロック時代を思わせるナンバー。この曲もハイライトの一つでしょう。クラレンスがマンドリンを弾き、ヴォーカルも聴かせる「Take A Whiff On Me/テイク・ア・ウィフ・オン・ミー」は、トラディショナル・ナンバーをカントリー?ブルー・グラス風にアレンジしたもの。

「You All Look Alike/ユー・オール・ルック・アライク」は、再びスキップ・バッティンと彼のパートナー、キム・ファウリーの共作。ヴォーカルはマッギン。フィドルの名手バイロン・バーラインが参加しています。ラストを飾る「Well Come Back Home/ウェル・カム・バック・ホーム」はスキップの単独作品。ベトナム戦争の兵士へ向けて歌ったものだということですが、エンディングには“南無妙法蓮華経”と、繰り返し唱えられるという非常にユニークなナンバー。

バーズのこれまでの歩みを集大成したような側面を漂わせながら、ロック・バンドとしての新たな貫禄をも見せ付けたアルバムでもあり、本作を最高傑作とするファンも少なくありません。私個人もバーズの名盤として、最も好きな一枚です。

1.Lover Of The Bayou/ラヴァー・オブ・ザ・バイユー
2.Positively 4th Street/寂しき4番街
3.Nashville West/ナッシュビル・ウェスト
4.So You Want To Be A Rock'n' Roll Star/ロックン・ロール・スター
5.Mr.Tambourine Man/ミスター・タンブリン・マン
6.Mr.Spaceman/ミスター・スペースマン
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7.Eight Miles High/霧の8マイル
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8.Chestnut Mare/栗毛の雌馬
9.Truck Stop Girl/トラック・ストップ・ガール
10.All The Things/オール・ザ・シングス
11.Yesterday's Train/昨日の汽車
12.Hungry Planet/飢えた惑星
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13.Just A Season/ジャスト・ア・シーズン
14.Take A Whiff On Me/テイク・ア・ウィフ・オン・ミー
15.You All Look Alike/ユー・オール・ルック・アライク
16.Well Come Back Home/ウェル・カム・バック・ホーム

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このページは、eco-imagineが2007年5月16日 16:58に書いたブログ記事です。

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