Elton John/The Captain And The Kid:エルトン・ジョン/キャプテン・アンド・ザ・キッド

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エルトン・ジョン - The Captain and the Kid


エルトン・ジョンの新作が前作『Peachtree Road/ピーチトゥリー・ロード』(04年)以来、2年ぶりという意外にも短いインターヴァルで発表されました。往年のファンならば、タイトルを聴いただけで75年の名作『Captain Fantastic And The Brown Dirt Cowboy/キャプテン・ファンタスティック』を想像する人も多いでしょう。そのアルバムは、エルトンと彼の生涯の音楽パートナーとも言える作詞家バーニー・トウピンの二人の人生を、キャプテン・ファンタスティックとブラウン・ダート・カウボーイというキャラクターに置き換えて展開した、いわゆる自叙伝的な内容をもつ名コンセプト・アルバムでした。

今作はその後の二人の歩みを綴った続編的な内容で、バーニーの歌詞も回顧的なものに満ちており、またサウンドにもそれに合わせたかのように70年代初期から中期の頃のようなロック・スピリットが戻ってきていて、かつてのような派手さや瑞々しさはないものの安定した大人のロックを聞かせてくれる力作に仕上がっています。バックのメンバーも、デイヴィー・ジョンストン(ギター)、ナイジェル・オルソン(ドラムス)を始めとするお馴染みの面々が顔をそろえており、そのことだけでも実に安心出来ます。因みにプロデュースはエルトン自身によるもの。

第37代アメリカ大統領リチャード・ニクソンが、世界的に有名になったウォーターゲート事件によって辞職を余儀なくされたのは、1974年8月のこと。おそらく『Captain Fantastic And The Brown Dirt Cowboy/キャプテン・ファンタスティック』をレコーディングする直前だったであろうと思われます。アルバムはその頃のことを綴ったと思われる「Postcards From Richard Nixon/リチャード・ニクソンからの葉書」で幕を開けます。叙情的なエルトンのピアノが素晴らしいメロディアスなナンバーになっています。

エルトンはかつて“どのアルバムにも最低一曲は、ローリング・ストーンズへリスペクトするナンバーを収録するつもりだ”などと発言していたほど、自他共に認めるストーンズ・ファンでもありますが、続く「Just Like Noah's Ark/ノアの箱舟のように」はそんな彼の一面が顕著に現われた一曲と言えます。エルトンのホンキー・トンク・ピアノもゴキゲンな、アーシーなロックンロールを展開。ここ最近ではこういったソリッドなロック・ナンバーはなかなか聴けなかったので、こういった楽曲が戻ってきたのは個人的には嬉しい限りです。

70年代のエルトンはとにかくアメリカでの人気が物凄く、出すアルバムが立て続けに全米No.1(7作連続)を獲得するなど大成功を収めていましたが、「Wouldn't Have You Any Other Way (NYC)/エニー・アザー・ウェイ(NYC)」は、そんなアメリカはニューヨークへの思いを綴った感傷的なナンバー。個人的に今作での一番のフェイヴァリットとなったのが、続く「Tinderbox/ティンダーボックス」。ジョンストンとオルソンによる往年のコーラス・ワークも冴える、エルトン節に満ち溢れた一曲です。

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アップ・テンポでキャッチーな「And The House Fell Down/アンド・ザ・ハウス・フェル・ダウン」を挟み、重厚で美しいバラード「Blues Never Fade Away/ブルース・ネヴァー・フェイド・アウェイ」では、ジョン・レノンの死後の自分たちの心情を描いたような歌詞が胸を打ちます。この曲も今作のハイライトの一つと言えるでしょう。エルトンのリリカルなピアノによる弾き語り形式の「The Bridge/ザ・ブリッジ」は、アルバムからのファースト・シングルに選ばれたナンバーで、中盤のコーラス・ハーモニー共々、凛とした美しさを湛えています。

ジョンストンの吹くハーモニカがフィーチュアされた「I Must Have Lost It On The Wind/アイ・マスト・ハヴ・ロスト・イット・オン・ザ・ウィンド」はミドル・テンポのフォーク・ロック風ナンバー。ピース・アンド・ラヴに満ち溢れた時代だった1967年という年を振り返る「Old '67/オールド '67」は、カントリーのテイストを感じさせるバラードで、エルトンのソウルフルなヴォーカルも聴きものです。

そしてアルバム・タイトル・ナンバー「The Captain And The Kid/キャプテン・アンド・ザ・キッド」で、幕を下ろすわけであるが、やはりこの曲が最も注目に値すべきナンバーでしょう。ジョンストンの弾くスライド・ギターやマンドリンの音色も素朴な、エルトン流カントリー・ロックとも言える(ピアノのトーンやメロディはいたって英国的)ナンバーですが、エルトンのピアノが紡ぎ出すこのメロディに“あっ!”と反応する人も多いでしょう。そう『Captain Fantastic And The Brown Dirt Cowboy/キャプテン・ファンタスティック』のタイトル・ナンバーだったギター・フレーズをそのまま借用しているのです。また、タンブルウィード、黄色いレンガ道、ロケットマンといったかつての懐かしい名曲・名作のタイトルを盛り込んだ歌詞がとりわけ素晴らしい。この曲の存在が見事に、2枚のアルバムをリンクさせています。このラスト・ナンバーで涙ぐむ往年のファンも少なくないかも知れません。

エルトンの紡ぎ出す珠玉のメロディ、バーニーの素晴らしい詞、気心の知れたバンド・メンバーによる引き締まった演奏、その3要素が結びついたこのアルバムは間違いなく近年の傑作と言えるでしょう。今作はジャケットに、初めてエルトンとバーニーの二人が収まったアルバムでもあるらしく、二人のこれまでの歩みを俯瞰するかのように、数々の写真がコラージュされたブックレットも見物になっています。本作によってキャリアを一区切り?したエルトン、次作ではヒップ・ホップに挑戦したいと息巻いていますが、はてさてどうなることやら。

1.Postcards From Richard Nixon/リチャード・ニクソンからの葉書
2.Just Like Noah's Ark/ノアの箱舟のように
3.Wouldn't Have You Any Other Way (NYC)/エニー・アザー・ウェイ(NYC)
4.Tinderbox/ティンダーボックス
5.And The House Fell Down/アンド・ザ・ハウス・フェル・ダウン
6.Blues Never Fade Away/ブルース・ネヴァー・フェイド・アウェイ
7.The Bridge/ザ・ブリッジ
8.I Must Have Lost It On The Wind/アイ・マスト・ハヴ・ロスト・イット・オン・ザ・ウィンド
9.Old '67/オールド '67
10.The Captain And The Kid/キャプテン・アンド・ザ・キッド

「The Bridge/ザ・ブリッジ」

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このページは、eco-imagineが2006年10月 5日 15:33に書いたブログ記事です。

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